入院前、嫁に一冊の本を勧められた。
正直、そのときの自分は「自己啓発」という言葉に少し距離を置いていた。
体調のこと、これからのこと、考えなきゃいけない現実が山ほどあって、
前向きな言葉を真正面から受け止める余裕がなかったからだ。
それでも、病室のベッドの上で手に取ったのが
【DIE WITH ZERO】
タイトルだけ見ると、少し挑発的に感じる。
でもページをめくると、語られているのは「死」そのものじゃない。
むしろ、「どう生きるか」「いつ使うか」「何を後回しにするか」
そんな、ごく当たり前なのに普段は目を逸らしている問いだった。
病気になると、当たり前が当たり前じゃなくなる。
今日が普通に来る保証なんて、どこにもないと知る。
だからこそ、この本の言葉はやけに静かに胸に落ちてきた。
「もっと稼いでから」
「落ち着いたら」
「元気になってから」
そうやって先延ばしにしてきたものは、本当に“その時”が来るんだろうか。
入院中という、強制的に立ち止まらされる時間の中で読むからこそ、
この本は人生観を押し付けてこない。
ただ、選択肢をそっと差し出してくる。
読み終わったあと、
「人生観、変わるってこういうことかもしれないな」
そんな感覚が残った。
嫁がこの本を勧めてきた理由も、少しだけ分かった気がする。
心配だからこそ、焦らせるんじゃなく、
ちゃんと“今”を考えてほしかったんだと思う。
病気をきっかけに人生観が変わる人は多い。
でも、この一冊は、病気じゃなくても読んでおいて損はない。
むしろ、何も起きていない「今」こそ読む意味がある本かもしれない。
人生を少し立ち止まって考えたい人には、静かに刺さる一冊です

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